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歯とお口の健康チェック:むし歯編


用語説明


むし歯のでき方

むし歯のでき方

 むし歯は歯質(エナメル質、象牙質、セメント質)の無機塩の脱灰(カルシウムイオンやリン酸イオンなどが流出する)と有機質の溶解を伴う歯質の崩壊を示す病気です。歯質の無機塩とはハイドロキシアパタイトでCa10(PO4)6(OH)2の化学式で表わされ、そのカルシウムとリンの比は2:1前後で一定しています。脱灰は口腔環境が酸性に傾いた時に起きます。その要因の最大なものは口腔内の不潔により、ショ糖(砂糖)を分解するミュータンス菌が増殖し、糖代謝の結果有機酸が作られことです。飲食回数の多い場合や唾液の分泌量が減る夜間なども口腔内が長時間酸性環境にさらされます。唾液には緩衝作用があり、酸性になった口腔環境を中和する働きがあります。ショ糖(砂糖)を含む食品はむし歯菌の栄養源となります。


むし歯の進行度1
C0
白斑
表層下脱灰
むし歯の進行度2
C1
エナメル質う蝕(むし歯)
むし歯の進行度3
C2
象牙質う蝕(むし歯)
むし歯の進行度4
C3
歯髄う蝕(むし歯)

再石灰化

 一度、溶け出した硬い組織の材料であるカルシウムイオンやリン酸イオンが口腔環境が変わって再び取り込まれることをいいます。初期のむし歯である白斑(表層下脱灰)は可逆的な病変です。唾液やプラーク中に重炭酸イオン(HCO3-)が多くなると水素イオン(H+)と反応して、pHはあがり酸性環境が中和されます。さらにリン酸イオンも水素イオンと反応するようになると過飽和になり、溶解し解離したカルシウムイオンやリン酸イオンが再度取込まれて石灰化します。こうなりますと白斑は消失します。この反応は微量のフッ素イオンが存在するとより促進することが知られています。日常生活の中で脱灰と再石灰化のバランスがとれていれば、むし歯は進行しません。脱灰を促進する最大の原因である細菌の酸の産生を抑えることが極めて大切です。

キシリトールとリカルデント

 キシリトールは白樺の木から抽出された糖アルコール系で代用甘味料として使用されます。むし歯菌であるミュータンス菌はこれをグルカン合成の基質として利用することができません。むしろ、キシリトールは細菌の糖代謝を阻害します。さらには再石灰化を促進する作用があることから歯磨き剤やガムに応用され、むし歯予防の一つの決め手になっています。再石灰化を促進する別な物質としてリカルデントがあります。乳製品を多くとる人たちにむし歯が少ないことに着目して、牛乳蛋白から生まれたCPP-ACP(カゼインフォスフォペプチド-非結晶性リン酸カルシウム)という物質です。ガムに応用されむし歯予防に役立っています。

バイオフィルム

 歯垢(デンタルプラーク)を構成する細菌の巣のこと。口の中が不潔になると最初歯の表面に唾液中の糖蛋白質の薄い膜が出来、その上に酸素を好む細菌が付着します。これらの細菌はショ糖(砂糖)を原料にして酸と不溶性グルカン(のり状の物質)を産生し、歯と細菌そして菌体同志が固着しやすい環境ができあがります。時間が経過するとこれらの菌を足場にして、酸素がなくても棲息する細菌が増殖します。このように歯垢が成長すると数層におよぶ多種類の細菌の層ができあがり、外界と独立した薄い膜状の構造物が出現します。この中では物質の流れやエネルギーの流れが生まれ、自己再生産のシステムが存在します。表面は水に溶けにくいグルカンに守られ拡散障壁もできあがり唾液成分や抗菌剤に抵抗を示すようになります。このことにより病原性を発揮するようになります。

PMTC

 Professional Mechanical Tooth Cleaningの略で専門的なクリーニングのことを意味します。PTCともいいます。患者さんの家庭でのブラッシングに加えて、歯科医院で積極的に特殊な道具と研磨ペーストを使用して歯面を清掃研磨して、歯垢を構成する細菌の巣であるバイオフィルムを除去して、むし歯や歯周病になりにくい口腔環境を作ろうというものです。

クリーニング PMTC 専門的なクリーニングを行っているところ。

MI

 歯科医の国際的な組織である国際歯科連盟(FDI)は2000年に、Minimum Intervention(最小の侵襲)MIという新しいコンセプトを提唱しました。これは個人のリスクを考慮して、真にむし歯の部分のみを最小限除去して出来るだけ歯質の保存をはかろうというものです。この背景には接着性レジンという歯科材料の進歩があります。

知覚過敏

 むし歯ではないのに歯が痛むことがあります。その多くは知覚過敏です。これは歯の神経である歯髄が軽い炎症を起こしており、刺激が加わると短時間に激しい痛みが起こることをいいます。歯の表面のエナメル質が何らかの原因で脱落喪失して象牙質が露出した状況が出現すると知覚過敏が起き易くなります。いわば、いままで被っていたコートが外れて刺激が伝わり易くなったと言えます。表面的には肉眼では変化が解りませんのでむし歯でないのに痛みが発生することになります。象牙質の表面は象牙細管が顔を出しており刺激が伝わりやすい状況です。治療としては温熱刺激、化学的刺激、物理的刺激を避けること、歯の表面を清潔にすること、さらには歯の表面を無機塩等でコートする方法が考えられます。また、レーザーによる治療法もあります。

唾液

 唾液には緩衝作用という、口の中が酸性に傾いたり、アルカリ性に傾いたりすると中性(pH7.4前後)に戻す作用があります。口の中が酸性に傾くと歯の結晶が溶け出し、むし歯が出来易い環境になります。唾液が正常に分泌されれば、口の中の環境改善に役立ちます。高齢者、糖尿病の方、多くの薬を服用されている方は唾液の分泌量が減ってきます。そうするとむし歯になるリスクもあがります。唾液はアミラーゼ、リゾチーム、ラクトフェリン、ヒスタチン、分泌型 IgAなどを含み消化作用、洗浄作用や抗菌作用などを有しています。唾液の分泌を促すことにより、間接的ですがむし歯や歯周病の予防につながります。唾液は成人で1日約1リットルほど分泌されます。分泌量は夜間は少なく、昼間が多くなるサーカディアンリズムがあります。就寝中は唾液の分泌量が減りむし歯になるリスクがあがりますので就寝前の歯磨きが大切になります。

フッ素

 フッ素はむし歯の予防に効果的という話を聞きますが、これは歯質を構成しているハイドロキシアパタイトがフッ素を取込んでフルオロアパタイトという結晶にかわります。そうすると歯質が耐酸性を獲得し、歯質強化につながり、むし歯にかかりにくくなります。また、フッ素には再石灰化を促進したり、むし歯の原因となるミュータンス菌の成育を抑制したり、酸産生を阻害します。
フッ素の歯面塗布、うがいや歯磨き剤、むし歯の治療の詰め物に含ませる等のかたちで利用されます。



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