かぐや姫に思いを馳せるタケノコの季節


  故郷やどちらを見ても山笑ふ  正岡子規image-20220510153017-1

  「山笑う」は春の季語。久しぶりに故郷に戻った正岡子規を温かく迎えてくれる人たち、故郷の山々までもが嬉しそうに………。このゴールデンウィークに、お里帰りしたくなりますね。

  すくすくと伸びる若竹のような新人を職場に迎え入れて、もうすぐ1カ月。厳しい就職難をくぐり抜けてきた彼らが職場に新風を吹き入れ、しっかり仕事を覚えて、どんどん成長していくのが楽しみです。

  わが国最古の物語「竹取物語」は、竹の不思議な力にちなむお話です。古来、竹は茎が空洞であること、成長が急激なことから神聖視され、神霊の依代(よりしろ)と考えられていました。

  竹やぶで見つかったとき、わずか10cmの赤ちゃんだった主人公の姫君は、たった3週間で輝くように美しい女性に成長し、「なよ竹のかぐや姫(なよやかで 輝くように美しいお姫さま)」と呼ばれます。その後、噂を聞いて押し掛けた5人の貴公子の求婚を退けるため、姫が無理難題を課すわけですが……。

  実はこのあたりは当時の政治風刺になっています。例の5人の貴公子は平安初期の実在の人物にだいたい特定できて、天武天皇、持統天皇に仕えた、壬申の乱で 功があった、という共通点があるそうです。悪巧みがうまく、嘘つきで酷薄な「車持皇子」のモデルは藤原不比等。竹取物語の作者は不詳ですが、当時の状況か ら考えて、藤原氏の謀略で失脚した紀貫之が作者だとか、いや、藤原氏への批判をかわすために不比等自身が書いたのだとか、研究者によって見解が分かれると ころです。

  かぐや姫が月に帰った後、姫に求愛していた帝は、姫から贈られた不死の薬を日本で一番天に近い場所・富士山頂で燃やさせました。富士山頂には今もその煙がたなびいている………というところでこのお話が終わります。

  富士山は7月1日が山開きなので、本当に薬を燃やしたか真偽のほどは確認できませんが、車で行ける富士吉田口の5合目でも高度2305m。高度が 1000m上がると気温は6℃下がりますから、トレッキングやハイキングを予定している方は、暖かい日でも防寒対策を怠りなく。

  なお、旬を迎えるタケノコは私たちの健康の味方です。低カロリーで食物繊維やビタミンに富む上に、体内のナトリウムを排出するカリウムやミネラルも豊富。 ちなみにタケノコを茹でた時の白い粉はチロシンで、集中力を高める神経物質・ドーパミンの原料になります。煮物やタケノコご飯を作って、たっぷり召し上 がってください。

 

コラムニスト 鈴木 百合子

 

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