満点の夜空を駆ける狩人オリオンの物語2013.12.20

満点の夜空を駆ける狩人オリオンの物語

  この時期は一年でもっとも星空がきれいな季節。
  仕事が一段落して夜空を見上げると、冬の南の空の中心に輝くオリオン座が見つかります。オリオン座は、狩人オリオンが右手に退治した大きなライオンの毛皮をもち、左手で太い棍棒を振りかざしている姿です。

  星座の伝説は地域ごとにいろいろなバージョンがありますが、ギリシア神話によると、オリオンは海の神ポセイドンの息子でギリシア一番の狩人。しかも稀に見る美貌の大男でした。
  もとは力自慢の乱暴者でしたが、ある宮殿で狩猟の神でもある月の女神アルテミスと恋に落ちてからは穏やかになり、二人でクレタ島に行って狩りを楽しみながら暮らしていました。
  しかし、二人の仲を快く思わないアルテミスの双子の兄、太陽神アポロンに罠にかけられたオリオンは、無惨に殺されてしまいます。嘆き哀しむアルテミスは、最高神ゼウスに頼んでオリオンを夜空に上げてもらいました。冬の夜に月がオリオン座を通っていくのは、アルテミスがオリオンに会いに行くからなのだそうです。

  さて、古代の航海の目印として大活躍したオリオン座は、現代の天文学でも注目の場所。星の一生のさまざまな段階の天体を見るのに絶好の領域なのです。
  中でもひときわ目立つのが、赤い老人星のベテルギウス。太陽の1000倍の直径を持つ巨大な恒星です。その傍にある若々しく青白いリゲル、誕生してまもない赤ちゃん星、そしてその星を生み出す素材となる、鳥が翼を広げたような形のガス星雲が見えます。このオリオン座大星雲M42は、星の誕生現場。望遠鏡で観ると、視野いっぱいに大きく広がるガス星雲全体がほんのりピンク色をおびて、目のさめるような美しさです。

  さらに、老人星のベテルギウスは、すでに超新星爆発を起こしている可能性があるとか。ベテルギウスと地球の距離は640光年ですから、もしベテルギウスが640年前にすでに爆発していたら? おそらく満月の100倍のまぶしさになり、昼間でも肉眼ではっきり確認できます。その状態が3か月ほど続いた後、次第に暗くなっていき、その4年後には肉眼では見えなくなり、オリオン座は右肩の星を失うそうです。

  冬の星空を見つめていると、果てしなく広がる宇宙に吸い込まれそうな心細さを感じます。
  科学的に見れば、今、その実態があるかどうかわからないけれど、今の私たちの目に確かに見えている、美しい星の光と清らかな夜の静寂。このさざめく星々が、目には見えない人の絆や愛情のように、いつも皆様の心を明るく照らしてくれることを祈ります。
  皆様、素晴らしい新年をお迎えください。

コラムニスト 鈴木 百合子