サッカーワールドカップ(W杯)南ア大会で、決勝トーナメント進出を果たした日本代表。快進撃に湧いた熱戦の日々をお土産に、1日、日本選手団が帰って来ました。関西国際空港に詰めかけたサッカーファンは、約4,200人。空港内に入り切らず、外から見守る人までいたようです。
チーム全員が団結して助け合う、ミスをしない、一人ひとりが自分の持ち場で力の限り走る、という日本の国民性そのままの試合を体現して、弱小チームと言う前評判を覆し、ベスト16まで勝ち進んだ侍ジャパン。
格上の相手にも、基本を守って生真面目に立ち向かっていく姿の美しさ。皆様の中にも、デンマーク戦でだめ押しのシュートが決まった時や、土壇場でパラグアイチームに僅差で競り負けた時、思わず涙ぐんだ方もいるのではないでしょうか。
もっとも岡田監督ご自身は、ここまで勝ち進んだことより「惜敗して悔しい」という思いの方が強かったようで、「ファンの声援に驚いた。ただ、多くの人たち、特に若い人たちの目が輝いているのを見て、やはりジーンときた」とコメントしておられました。
さて、応援チームが勝利すると、ファンは成功者と一体感をもつことにより自己評価が高くなり、瞬間的ですが、自分自身にも自信をもつことができます。心理学ではこういう心理状態を「栄光浴(reflected glory)」といいます。
いわば「トラの威を借るキツネ」ですが、これは誰でも持ちうる感情。家族や知人の成功をわがことのように誇りに思うなかで、無意識に、自分の劣等感を補償し、自尊感情を高め、共通性の高い目標・話題を持ち、集団への帰属意識を高めるという複数の願望を同時に満たす心の動きです。
実は、「栄光浴」は自尊感情が低下している場合に生じやすい傾向があり、マスコミが彼らを酷評したのも、その後、手のひらを返したように絶賛するのも、社会全体に「状況が悪くても、がんばれば逆転できる!」という雰囲気が薄れていたからかと思います。
そんな中で立派な結果を出し、一瞬、日本の社会の沈滞ムードを吹き飛ばしてくれた侍ジャパンに、「ありがとう!」と言いたいです。
コラムニスト 鈴木 百合子