英語では、口臭のことを “Bad breath(悪い息)”と表現します。また、口臭がものすごく強い人を“Dragon breath”といいます。ドラゴンが口から火を噴いて人を威圧するように、強烈なにおいを発する人は周囲の人から嫌われてしまいます。診断名としての口臭症は“Halitosis”ですが、その語源は、『息』を意味するラテン語のhalitusと『異常な状態』を意味するギリシャ語の-osisにあると考えられています。すなわち、呼吸や会話をする時に口から出てくる息がにおって他人が不快に感じる状態が、「口臭」ということになります。
かわいらしいドラゴンが口から火を吹く絵 しかし、「口臭」があるといってもその程度や頻度は人によって異なります。起床直後やにおいの強い食品を食べた後などは、誰でも多少においがあるものです。このようなにおいは生理的口臭、食餌性の口臭ですが、通常、そのようなにおいは時間の経過と共に減少していきます。問題となるのは、病気によって発生する口臭です。口の中の病気、鼻やのどの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気などが口臭と関連していると考えられていますが、口の中に原因があるものが口臭全体の90%以上を占めています。ですから、口臭が気になったら、まずは歯科医院で相談されるといいでしょう。
最初に口臭がどうして発生するのかを説明しましょう。口の中にいる細菌は、新陳代謝ではがれた粘膜上皮、血球成分、細菌の死骸などのタンパク質成分を分解して、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫黄化合物をつくります。これが口臭の原因となるにおい物質です。発生する口臭の強さは、口の中の細菌、汚れ(主にタンパク質成分)、唾液の量などによって異なります。
それでは、生理的口臭の1日の変化を図でみてみましょう。皆さんは、朝、起きたときに口の中がネバネバして、不快に感じたことはありませんか? 日中は唾液によって口の中の汚れは洗い流されていますが、眠っている間は分泌される唾液の量が少なくなるため、汚れが残って細菌が増殖し、口臭の原因物質がたくさんつくられます。したがって、起床直後に口臭は最も強い値を示します。しかし、朝食をしたり歯磨きを行うことで、唾液がよく出て細菌や汚れが減少すると口臭は急激に下がります。しかし、時間が経って昼食前になると、また、口臭は強くなってきますが、これも食事や歯磨きを行うことで減少します。そして、夕食前にまた口臭が強くなり、食事や歯磨きで減少します。このように、生理的口臭には日内変動がみられますが、ゼロ(無臭)になるということはありません。私たち人間は生きている限り、毎日食事をし口の中ではさまざまな代謝が行われているので、無臭でいることはありえません。ですから、あまり神経質になる必要はなく、他人を不快にさせるような強いにおいがでないように気をつければいいのです。

誰もが経験したことがあるように、ネギ・ニラ・ニンニクなどのにおいのある食品を食べたり、お酒を飲んだりした後で、息は少しにおいます。また、タバコを吸っている人の吐く息には、ニコチンやタールによる独特のにおいが感じられます。
しかし、口臭はこれらの食品や嗜好品のにおいとは別なにおいです。口臭の90%以上は、口の中の汚れや病気が原因です。その場合、口の中の細菌がタンパク質を分解して、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの硫黄を含んだガスをつくります。それぞれ特有のにおいがあり、硫化水素は腐った卵のようなにおい、メチルメルカプタンは血生ぐさい、魚や野菜が腐ったようなにおい、ジメチルサルファイドは生ゴミのようなにおいと表現されています。どれもいやなにおいですが、口臭はこれらのにおいが混合したものなので、誰もが不快に思うのは当然です。
また、全身の病気が原因で口臭が発生する場合には、表に示すようなにおいが感じられることがあります。
| 原 因 | におい |
| 呼吸器系(肺癌、肺膿瘍) 消化器系(胃癌、食道気管) 耳鼻咽喉系(扁桃炎、咽頭膿瘍、喉頭癌) |
タンパク質の壊疽臭 |
| 咽頭、気管支、肺のカンジダ感染 | 甘いにおい |
| 糖尿病 | アセトン臭 |
| 肝硬変、肝臓癌 | アンモニア臭 |
| トリメチルアミン尿症 | 魚臭 |