嗅覚には順応反応があり、同じにおいを長時間嗅いでいるとそのにおいに慣れて反応しなくなると言う特徴があります。したがって、自分のにおいの質や強さを自分で確認することは非常に難しいと考えられています。また、同じ人間が同じにおいを嗅いでも、体調や精神状態で受け止め方が異なります。体調が不良な時には、普段つけている香水がいやになる場合があります。スポーツ後の汗臭いにおいも、好きな人であれば好ましく感じますが、他人であれば不快に感じます。
鼻の中にあるにおいを感じる細胞(嗅細胞)がにおいの分子をキャッチして、その情報を脳に伝えることで私たちはにおいを意識しますが、嗅覚は上述したように状況や環境、主観によって大きく影響を受けます。このように、自分の口臭は自分では確認しにくいのですが、口臭のことを独りで気にしすぎるのもよくありません。起床時、空腹時、緊張時などの生理的口臭は誰にでもあるのです。気になる場合は、家族など身近な人に確認してもらうか、口臭測定を行っている歯科医院で実際の口臭の有無を確認してもらうといいでしょう。
口臭の測定には、半導体センサーによる測定、ガスクロマトグラフィーによる測定、官能検査があります。口の中の微量なにおい成分を測定するため、どの方法においても約3分間口を閉じて空気を溜めてから測定します。口の中の空気を取り出すだけなので、測定の際に痛みなどは全くありません。
半導体センサーを応用した測定機器は、口臭の主成分である揮発性硫黄化合物の総量を測定できます。しかし、強い香料やアルコール類にも反応して高い値を示す場合があるので、測定前に香料の入った歯磨き剤や洗口剤を使用するのは控えたほうがいいでしょう。ガスクロマトグラフィーを使用すると、口臭の原因物質である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫黄化合物の量をそれぞれ正確に測定することができます。
このような機器を使用すると揮発性硫化物の量が数値で示されますが、実際の口臭には他の微量なガスも混合しているので、官能検査を行うことも重要です。口臭は、「呼吸や会話をする時に口から出てくる息がにおって他人が不快に感じる状態」と定義されるので、人が嗅いの有無を検査することは口臭測定の基本となります。
口臭予防効果をうたっている洗口剤、歯磨き剤、ガム、口中清涼剤などが数多く市販されています。それだけ口臭を気にする人が多いことを示しているといえるでしょう。これらの製品は、香料、殺菌剤、消臭剤などを含んでいますが、直接口臭を防止する効果はそれほど高くなく、香料でにおいを隠す遮蔽効果や、精神的に安心させる心理的効果のほうが大きいと言われています。
現在のところ、口臭の抑制効果が認められているものとしては、塩化亜鉛を含む洗口剤やスプレー、エッセンシャルオイルとエタノールの洗口剤、クロルヘキシジン洗口剤、フラボノを含むガムや口中清涼剤などがあります。これらを使用すれば一般的に口臭は減少し、その効果は約2時間程度持続しますが、口臭発生の原因を除去しない限り、本質的な口臭の改善とはなりません。
口臭発生の主な原因は歯周病や舌苔など口の中の病気や異常ですが、そのほとんどが歯や口の中の汚れと関係しています。したがって、口臭予防には口の中を清潔にすることが一番大切です。毎食後のブラッシングは口臭予防だけでなく、歯周病やむし歯の予防にも効果があります。小さめの歯ブラシを用いて、歯面に押し付けるように小刻みに動かして歯の汚れを取りましょう。



また、歯ブラシでは汚れが取れにくい歯と歯の間の清掃には、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助用具を利用しましょう。なお、入れ歯を使用している人は、歯だけでなく入れ歯のお手入れも必要です。




手鏡で舌を観察して、舌苔が厚くついている場合には、舌の清掃も必要となります。舌ブラシややわらかい歯ブラシを使用して舌苔を除去しましょう。1日に何回も磨く必要はなく、舌苔が溜まっている起床時に舌の清掃を行うのが効果的です。


食事をすると口臭が強くなると考えて食事の回数を減らしたり、絶食したりする人がいますが、前出の質問(口のにおいの強さは、一日中同じですか?)の生理的口臭の日内変動のところで説明したように、食事をすることでかえって口臭は低くなる場合が多いのです。また、ストレスや緊張時に口臭が強くなることも報告されているので、食事や睡眠時間などをキチンと守って規則正しい生活を送り、リラックスした気持ちで毎日を過ごすことも口臭予防には大切です。
口臭があるかどうかは自分では分かりにくいですが、口臭のことを気にしすぎるのもよくありません。口臭が気になったら、まずは歯科医院で相談してみましょう。