音読 + ボイストレーニングのススメ


image-20220510111051-1おうい くもよ
ゆうゆうと ばかに のんきそうじゃ ないか
どこまで ゆくんだ
ずっと いわきだいらの ほうまで ゆくんか

山村暮鳥「雲」

  先日、NHK「日本語であそぼ」の監修で知られる齋藤孝教授の児童向きの作品を読みました。
  齋藤教授は本のあとがきに、幼児や小学時代に近代詩の音読で「感情の海」を豊かに満たされることが大切で、そういう深い情感が基礎にあると論的思考力も大きく伸びるはず、と書いておられます。

  齋藤教授よりずっと年長の私の親も、小学時代は音読が大切と考えていて、私も小学校高学年の頃、毎日夜8時になると親の隣で本の素読をしたものです。その第1冊は福田清人先生が小学校高学年向けに訳した「平家物語」で、最初は一章読むのに30分以上かかっていたのを、懐かしく思い出します。

  「平家物語」の次に音読したのは、やはり高学年向けの「古典文学全集」でした。
  今度は日本のおとぎ話の原典「今昔物語」や「万葉集」のようなリズム感あふれる楽しい作品が多かったので、私のような平凡な子どもでも、
「田子の浦ゆ うち出でてみれば真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」
などと自然に覚えてしまい、暗唱するのが楽しみでした。
  本のぺージをめくる時のワクワクする思いは、今も続いています。皆様もお子さんがいたら、時間の余裕のあるときに音読を聞いてあげてください。

  近年、音読は大人の脳トレにも注目されています。その場合、新聞から始めるのが簡単とか。あまり読まない分野の記事も、声に出して読んでみましょう。新しいことを知ると、脳がさらに元気になります。

  さて、脳や筋肉の老化はよく聞きますが、実は声も老化します。
 そんな「老人性喉頭」の対策について、イリノイ大学のアーロン ジョンソン教授とウィスコンシン大学の研究者チームの「ボイストレーニングによって、老化に伴う発声の変化を予防できる」という報告が、「Journals of Gerontology」という医学雑誌に掲載されました。

  ジョンソン教授らは6カ月の雄ラットと29カ月の雄ラットを用い、発声とその数を増やすボイストレーニングをされている状況で8週間を過ごした後、発声の強度を測定したところ、訓練された高齢のラットと若いラットは同じような声の強度を持ち、訓練されていない高齢のラットは、訓練を受けた高齢のラットや訓練されていない若いラットより声の強度が低くなっていました。

  これは人間にも応用できます。
 失礼ながら、小田和正さんや井上陽水さんは、それなりに年齢を重ねても高く美しい歌声が出ていますよね。私たちもボイストレーニングや音読を心がけ、楽しく老化予防をいたしましょう!

 

コラムニスト 鈴木 百合子

 

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